2006年10月3日、朝鮮外務省は核実験を行うことを宣言する「声明」を出した。今日はこの声明を題材に、朝鮮がなぜ核実験を行うに至ったのかについて、朝鮮がどのような理由をあげているのかを見てみることする。
1.アメリカに対する認識-変わらない敵視政策
「声明」では、アメリカの対朝鮮敵視政策が日ごとに増大しており、「わが民族の生死存亡を決する厳しい情勢が生じている」と認識している。また、7月のミサイル実験に対する国連決議の採択をアメリカによる「事実上の「宣戦布告」」ととらえている。
2006年6月26日~7月28日には環太平洋合同演習(RIMPAC)がアメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダ・チリ・ペルー・韓国・日本の参加で行われた。7月18日に原子力空母「エンタープライズ」がミサイル巡洋艦やイージス艦などを従えて釜山港に入港した。朝鮮にとっては、演習に加え、同時期にアメリカの軍艦が韓国に寄港したことを「北侵」の意図があるためだと捉えているのであろう。
そのような緊迫した情勢(朝鮮の受け止め方では)の中で、8月21日から9月1日まで米韓合同軍事演習「ウルチフォーカスレンズ」が行われた。この演習はコンピューターでのシュミレーションを中心とした演習だが、その目的を韓米連合司令部は「朝鮮半島偶発状況時の韓米連合軍の協調手続きなどを熟知するため」と発表した。そのため、「声明」では「朝鮮半島とその周辺で第2の朝鮮戦争挑発のための軍事演習と武力増強策動をよりいっそう狂ったように繰り広げている」と非難している。アメリカは朝鮮に対して軍事攻撃をしないとの立場を維持しているものの、朝鮮から見れば、口では攻撃をしないといいながらも、その機会を虎視眈々と狙っていると考えているのだろう。(しかし、これまでの「チームスピリット」をはじめとする演習が実際に「北侵」につながったことはない。)
北東アジアの国々の中で、さしあたってアメリカからの軍事攻撃を受ける心配を持っている国は朝鮮以外にはない。朝鮮は常にアメリカからの軍事攻撃を受ける可能性があり、在韓米軍をはじめ、自らを対象として配置されている兵力が存在すると感じている。朝鮮にとって、アメリカが「攻撃を行わない」と言ったとしても、朝鮮の立場からは攻撃を現実に行うことができる手段をアメリカが持っている以上、言葉通りに信じることができない。
RIMPACやウルチフォーカスレンズといった軍事演習は、定期的に行われているものであり、今現在、朝鮮に対する軍事攻撃の可能性が増したとは言えない。しかし、そのような軍事演習が、朝鮮への軍事攻撃があり得るとの前提に立って立案され、実施されていることが、朝鮮にとっては耐えられないのである。ここから、朝鮮は「技術的可能性=軍事的可能性」という思考法をもっているということがわかる。(とすると、アメリカ本土まで核弾頭を運搬可能な弾道ミサイルとそのミサイルに搭載可能な核弾頭が開発されれば、朝鮮はアメリカに軍事攻撃を行う計画をたてるのだろうか?それはわからない。)
2.核兵器は「自衛的戦争抑止力」
「声明」では、朝鮮の核実験は「自衛的戦争抑止力を強化」するために行われるとしている。そのために、「安全性が徹底的に保証された核実験」を行うとしている。そして、核兵器の先制使用を否定するとともに、「核兵器を通じた威嚇と核の移転を徹底的に許さない」としている。そして、今後は「朝鮮半島の非核化を実現し、世界的な核軍縮と最終的な核兵器撤廃を推進するため多方面にわたって努力する」としている。
抑止力にこだわることについて「声明」は「自らの頼もしい戦争抑止力がなければ人民が無念にも犠牲になり、国の自主権が余すところなく翻弄されるというのは、こんにち、世界のいたる所で生じている弱肉強食の流血の惨劇が示している血の教訓である」としている。これはおそらくイラクのことを念頭に置いているのだろう。
朝鮮が攻撃されなかったのは、朝鮮の抑止力(アメリカ軍が地上戦で攻めてこない以上、具体的にはアメリカの攻撃を受けたときに駐韓米軍と韓国に打撃を与えることができる力と考えてよいだろう)が一定程度以上あったためだと考えているように思われる。
朝鮮の核兵器の性格について、「声明」では、「われわれの核兵器は徹頭徹尾、米国の侵略脅威に立ち向かって国家の最高の利益とわが民族の安全を守り、朝鮮半島で新たな戦争を防ぎ、平和と安定を守る頼もしい戦争抑止力になるであろう」と規定している。また、「朝鮮はつねに、責任ある核保有国として核拡散防止分野において国際社会の前に負った自身の義務を誠実に履行するであろう」とも言っている。
朝鮮は自らを核保有国であると宣言するのと同時に、核拡散防止の義務を履行すると宣言したことは、アメリカが核拡散を警戒していることと関連している。
3.朝鮮半島の非核化は朝鮮半島からの外勢の除去
「声明」では、朝鮮は「朝鮮半島の非核化を実現し、世界的な核軍縮と最終的な核兵器撤廃を推進するため多方面にわたって努力する」とも言っている。朝鮮が考える「非核化」とは、何だろうか。「声明」では、「われわれの一方的な武装解除につながる「非核化」ではなく、朝米敵対関係を清算し、朝鮮半島とその周辺からすべての核の脅威を根源から取り除く非核化」であるとしている。
朝鮮の考える朝鮮半島の非核化とは、朝鮮が持っている核兵器を放棄することを単純に意味しない。アメリカが朝鮮に対する敵視政策をやめ、朝鮮半島とその周辺からアメリカ軍がいなくなってはじめて、朝鮮の考える非核化の条件が満たされると考えてよいだろう。
朝鮮には自らの核兵器開発によって、朝鮮半島が戦争の惨禍から救われているという発想もある。7月12日に第19回南北閣僚級会談が釜山で開かれた際、北側団長が「北の先軍が南の安全を図っており、南の広範囲の大衆がその恩恵を受けている」と発言した。この発言を敷衍すると(あるいは妄想をめぐらせると)、外勢の影響力を朝鮮半島から完全に排除して、南北が自主的に民族の将来について話し合い、その結果を実行に移すことができる環境こそ、朝鮮半島の非核化の条件である、と言うことができるかもしれない(私自身、そう確信しているわけではないが、そう考えないと権虎雄団長の発言はつじつまが合わない)。
私は専門家ではないので上手に文にまとめることができませんが、いくつか書きます。当然マスコミおよび専門家の方たちが言っていることにプラスしたことです。
まず、現時点の半島情勢は朝鮮が積極攻勢をかけて、アメリカがそれに対して後手後手にまわっているように見えます。(王手飛車取りぐらいまでいったんじゃないなと個人的には思っています)
次に今回の核実験は東北アジアにおいてのアメリカの弱体化を狙っているように思います。
アメリカはトランスインフォーメーションによって東北アジアから段階的に兵力を削減していこうとしています。それを促進し、日本にアメリカの兵力を閉じ込めようとしているのではないでしょうかー。
また、アメリカの存在が弱体化した東北アジアにおいて自ら主導権を握ろうといている。
そして歴史的教訓から「強勢大国」とは軍事力を背景にして中国、ロシア、および周辺大国と対等もしくは指示をうけない「自主国家」を目指しているのではと考えています。
ほかにもいくつか考えられることがありますが、なんせ素人判断ですから・・・
ただ対アメリカという関係だけで考えればかなり的確に対処いているのではと考えています。
間違いました。「強盛大国」でしたね。
hakhonさん、コメントをどうもありがとうございます。
コメントを書いていたら、長くなってしまったので、本文でこれについての考えを書いてみたいと思います。