2008年9月、建国60周年を迎えた平壌(その4)

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集団体操と芸術講演「アリラン」の内容は、朝鮮の現代史から将来の朝鮮の姿までを描くものとなっている。朝鮮労働党の考える歴史観、発展観に基づいて作られた巨大な「官製宣伝劇」と言ってもよいだろう。

「アリラン」の主要な対象は外国人観光客ではなく、実は、自国民だ。自国民を対象とした教育・宣伝を外国人(や海外同胞、南の人たち)が見ても楽しめるように芸術的に洗練させたものが「アリラン」と言えるだろう。

そういう「官製宣伝劇」は朝鮮半島研究者にとっては大変貴重な教材となる。なぜなら、「アリラン」には現在の朝鮮労働党が考えている世界観が反映されており、朝鮮の現状や政策を分析するときには、その世界観を知っておく必要があるからだ。

朝鮮の視点から朝鮮や周辺諸国、世界を見る視点を養うには、「アリラン」はとてもよい教材だ。



私は朝鮮経済に関心があるので、「アリラン」で経済がどのように紹介されているのかに注目した。その3で紹介した畜産の振興など、「人民生活向上」に関連するものとしては、大豆の増産や種子革命といったおなじみのスローガンがたくさん出てきた。


朝鮮は最近、産業政策で科学技術重視を打ち出しているが、「科学技術-最先端水準に」というスローガンが登場した。その他、IT重視などのスローガンも出てきた。



経済の話が終わった後、出てきたのは朝鮮の対外活動の基本である「自主、平和、親善」だった。この方針は1992年の憲法改正で、それ以前の「国家は、マルクス・レーニン主義及びプロレタリア国際主義原則で社会主義国と団結」するというものから大幅に変更されたものだ。



私は「アリラン」が「自主、平和、親善」のスローガンで終わったところに、朝鮮労働党の対外関係改善、特に米国と日本に対する関係改善の熱意を感じた。現実の行動では日本人から見ると好戦的に見えるが、国民に対する教育で「自主、平和、親善」により対外関係が開けていくと示していることに、朝鮮のある種の本音が見えるような気がした。

もちろん朝鮮の人々がとらえる「自主、平和、親善」の含意と国外の人々がとらえるそれには大きな差違があることも事実だ。国内向けには「自主」の固守を主張し、外国向けには「平和、親善」を強調するイメージ戦略があるのかもしれない。しかし私はソ連・東欧の社会主義政権が崩壊した直後の1992年に朝鮮が20年ぶりの憲法改正をして対外活動原則を変更した事実を重く受け止めたいと思っている。すでにEUの国々はフランス以外、朝鮮と国交正常化をしている。




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コメント(4)

詳しい説明をありがとうございました。
「種子革命」は何十年前から言っているスローガンですが、実際のところはどうなんでしょうかね。「種子革命」のためにはそれ相応の科学力が必要ですが・・・

高収量品種を積極的に導入しているようです。国内だけでなく、外国からもよい品種であれば導入するという方針になっているようです。

1990年代に日本の農業関係者を招いて日本の米について研究していた時期がありましが、その後、朝鮮の米が品種改良されたという話も聞かないし、米の生産がアップしたという話も聞かないし・・・

最近導入されたという話を聞いたのは、ジャガイモの新品種のようです。たしか「ラヤ」という品種で、オランダから輸入されたと言っていたような気がします。
米については、あまり話を聞きませんね。

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