ミサイル発射を受けて、勤務先で日本単独による対北朝鮮経済制裁の効果と課題というレポートをまとめた。このレポートは、2004年までの貿易データを元にして、日本の朝鮮に対する経済的影響力が低下しており、日本が単独で経済制裁を行っても、その効果は長く続かないという内容であった。
韓国のKOTRAから2005年の貿易データの暫定値が発表されたが、これを見ると日朝貿易が朝鮮の貿易総額に占める割合は5%を切り、中国、韓国、タイ、ロシアに次いで5番目に転落した。このグラフを見ると、2001年には朝鮮の第2の貿易相手国であった日本の割合が下がっていることが分かる。
拉致問題が日朝関係のメインイシューになる中で、日本の朝鮮に対する経済的な影響力は貿易から見る限りかなり低下した。経済制裁を外交カードとして使おうと準備はしてきたものの、そのカードを切る時点ではカードの有効性が低下してしまった。その意味では、日本が拉致問題に集中しすぎてしまったために、朝鮮の核兵器やミサイルの問題解決を遅らせてしまったということもできよう。
日朝関係を打開する意味で、経済制裁を外交カードとして使おうとするなら、朝鮮に対する日本の経済的影響力を上げなければ、カードを切る意味がなくなってしまう。現在報道されている、制裁一色の対応は、外交カードとしての経済制裁ではなく、行き詰まった日朝関係に対する日本国内のストレスの発散の要素が強いのではないだろうか。
国内のストレス発散のために、朝鮮に対する制裁の議論をするとすれば、外交カードのために制裁ができるようにするという、当初の経済制裁関連法案の趣旨は吹き飛んでしまう。それだけではない、朝鮮との関係正常化を行うための交渉を行う準備も全く行われておらず、「圧力と対話」の政策が圧力だけになってしまっている。
日本が望んでいることを朝鮮に聞いてもらうには、朝鮮側が利益になるカードも用意しなければならない。小泉首相は、国交正常化とそれにともなう経済協力というプラスのカードを用意して、第1回日朝首脳会談に臨んだ。これが拉致事実の認定と謝罪につながった。日本外交は日本の持っている「お金」という力を利用して、朝鮮のトップに拉致を認めさせた。
現在の膠着状態を解決するには、日本が自らが持っている力をうまく利用して、朝鮮との交渉に望む必要があるだろう。前述したように、国交正常化とそれにともなう経済協力は朝鮮経済を復興させる上で重要な要素となりうる。このようなカードをうまく使って、日本の朝鮮に対する経済的な影響力を向上させることが日本が当面行うべき課題ではなかろうか。
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